「最果てのイマ」レビュー

ようやく「最果てのイマ」をクリアしました。長かった〜。

そんなわけで久々にレビューを書こうと思いますが、ネタバレありなので(というか、ネタバレ無しだと感想を書けないくらい難解)これから遊ぼうと思っている人と、あと、大人向けのゲームなので子供の皆様は「続きを読む」を押さないで下さいね。




……それでは、まずはパッケージ紹介。


最果てのイマ

最果てのイマ


最初に結論を書いてしまうと、設定を消化しきれなかったゲームだなぁと感じました。設定を使うのではなく、設定に使われてしまったような印象。所々では面白い部分もあるのですが……まあ、詳しく見て行きましょう。

◆ ストーリー …… ( ´_ゝ`)

ストーリーについて書く前に、もう一度注意を。ネタバレ全開でいくので、これから遊ぶ予定の人は注意!

さて、ストーリーなのですが、SF格闘恋愛物(?)ですね。大雑把に纏めてしまうと、こんな感じです。

人類を絶滅させる強大な力を持った「敵」が現れました。

舞台は、人類の消滅がほぼ確定している絶望的な終末の世界。人類の最後の切り札として用意されたのが主人公の「貴宮忍」でした。

滅亡に向かう世界の中で主人公がヒロインたちと描く心の交流、そして、その後に起こる戦い。

はたして、忍は世界を救えるのか?仲間を守れるのか?

……「終末の世界での仲間との心の交流」とその後にくる「戦争」の二つがメインストーリーとなります。

このゲームが特殊なのは、この物語をバラバラの順番でプレイヤーに見せている事です。最初は同じ作者のゲーム「cross†channel」のようにループものかと思いましたが、今回は別にループしているわけではなく、同じ時間は二度と繰り返しません。ただ、バラバラに見せられているだけで……。「タイムリープ」という小説を読んだ方はおられるでしょうか?概念的にはあんな感じなのです。

例えば、時間軸上にABCDEFGHI……という順番にシーンが並んでいたとします。プレイヤーはそれをCGAIDHBG……と、まるで砕いたパズルを出鱈目に並べたかのような順番で見ていく事になります。図に表すと、こんな感じ。


図解


その為、ファーストプレイではプレイヤーは幾度となく「……おや?おかしいぞ?」と感じる場面が出てきますが、これは時間の流れ通りに話が出てこない為に起こる違和感なのです。このゲームでは前述の通り「戦争」が起こるのですが、この戦争前と戦争後の世界がごちゃまぜ状態で並べられて出てくる事による違和感なのです。

そんなわけで、物語の構成としては面白いと思うし、ファーストプレイが終わった後、物語を組みなおして「実はそういう事だったのか」というのを知るのも楽しいのですが……いかんせん、肝心の物語の出来がイマイチ

極端な事を言うと、前述のトリックを使わずに普通に時間軸と同じ順番に並べると、良くあるSF小説と大して出来が変わらないのです。そのSF作品も設定は凝っているものの、設定の説明にかなりの文章量を裂かれるため、結果的にプレイヤーは大して面白くもない説明的文章を長時間に渡って読ませられる羽目になります。

「物語を再構成する楽しさ」……という点でも大きな欠点があります。それはボリュームが多過ぎる事。ファーストプレイの終盤になる頃には序盤の話を忘れがちになってしまうので、再構成しようとしても、元の話を忘れてしまっているのです。

私が「設定に使われている」と書いたのはこういった理由による所が大きいです。物語を面白くする為の肉付けである筈の「背景世界」や「設定」が、いつの間にかそれ自体がメインになってしまい、肝心の物語の面白さが置き去りになってしまっていると感じるのです。

同じ作者のSFだと「cross†channel」が有名なわけですが、「cross†channel」の場合はちゃんと物語自体に魅力がありました。設定も凝っていましたが、それも「物語を面白くする」為の要素としてしっかりと働いていました。「最果てのイマ」は設定は凝っているものの、それが「物語を面白くする」要素になり得ていない部分があるのです。

また、説明不足な部分も多く、特に「伊月笛子」のシナリオでは余りにも分からない事が多すぎるため、物語を再構成するのが非常に困難になっています。文章が説明不足という意味では「Remember11」に通じる部分がありますね。明確な解が用意されていない問題というのは、プレイヤーにとっては思いの他ストレスが溜まるものなのです。

所々、部分的に面白い文章やギャグもあり、そういう所ではロミオ氏らしさを感じる事も出来るのですが、その面白い部分が物語の長さに対して圧倒的に足りない。結果的に冗長なシナリオだという印象を受けます。

プレイヤーに必要な情報が足りず、プレイヤーにとって詰まらない文章が多い。これが、このゲームの印象を悪くしている最大の要因だと思うのです。

◆ システム …… ( ´_ゝ`)

まず、最初に一言。「直前のリンクに戻る」のコマンドをちゃんと用意して下さい……

追記:オートセーブから、直前のリンクに戻れる事が判明。大変失礼しました……


このゲームでは選択肢の代わりに「リンク」という概念があります。これはインターネット上のリンクとほぼ同じで、文章中に他のシーンに移動する為の単語に目印がふられているというものです。このリンクを行ったり来たりしながら話を進めます。

が、このリンク、ぽちぽち文章を読み進めていると、うっかり、リンクがある事に気付かず、そのままクリックしてしまい、次の文章を表示させてしまう事が良くあるのです。こうなると、もうそのリンクには戻れません。チャプター履歴等を使って、シーンの頭に戻らないと如何しようもありません。不便です。メッセージの履歴からでもリンクを飛べるか、「直前のリンクに戻る」コマンドを用意するかどっちかの救済手段を容易して欲しかったです。


追記:繰り返しますが、オートセーブから戻れます。大変失礼しました。ああ、プレイ中に「オートセーブ」から戻れる事に気が付いていたら……



既読スキップもやや重め。というか、システム全般にやや重め。もう少しキビキビ動作して欲しかったかな。

◆ グラフィック …… ( ´∀`)

塗りは綺麗。一枚絵もキャラクターの動きを感じられる絵が多くて良かったです。キャラの表情も豊か。女性キャラの髪形のバリエーションがやや乏しかったかな……葉子と笛子なんか後ろの髪が無いと殆ど同じキャラだし……。

◆ 音楽 …… ( ´∀`)

ピアノを中心に静かながら聞かせる曲が多くて良かったです。クラシックからも数曲エントリー有り。曲数は少な目。

あ、あとこのゲームはキャラクターの音声がありません。昔は声がなくても何とも思わなかったのですが、最近は音声が付いているゲームに慣れてしまったせいか、最初若干寂しく感じました。

◆ えちぃ …… ( ´_ゝ`)

う〜ん。ちぐはぐという印象。

ストーリーの所でも話したように、物語がバラバラの順番で登場するので、エッチシーンが唐突すぎるように感じるのですね。だから、感情移入とかも出来ない。絵が大人しいのにテキストは濃い目だったりしているのも、ちぐはぐ。というか、このゲームに関して言えばそもそもエッチシーン要らないし。

ただ、ロミオ氏と言えばあれですよ。少年・少女時代のエッチ。過去の回想という形になるわけですが……今回も期待は裏切らないでしょう。ロリ属性な方は要チェックだ(笑)

あと、あれです。個人的な事を言えば主人公の忍くんは、もっとヒロイン達に奉仕してあげて欲しい。自分はフェラしてもらっているんだから、君もお返ししてあげようよ(笑)

お勧め属性:幼女・少年・メイド・純愛

◆ 総評 …… ( ´_ゝ`)

う〜ん。残念ながら万人にはお勧め出来ない作品です。

SFに興味のない人なら、戦争編が始まってすぐに放り投げてしまう事と思います。非常に人を選ぶ文章。背景世界の説明を聞くのが苦痛と感じたらもう駄目でしょう。

キャラクターとかはロミオ氏らしく、どのキャラも個性的でとても良く出来ていると思います。個人的お気に入りは葉子。あの性格、いいなぁ(笑)

ロミオ氏の作品は、どれも独自の世界観やアイデアがプレイヤーを驚かせ、楽しませる作品が多いのですが、今回はちょっとその世界観に引きずられすぎてしまった感が強いかな。途中、大幅にシーンが削られたという話や、使われなくなった没画像が多数存在しているという話も聞くので、時間的に話を纏め切れなかったのかもしれません。

そんなわけで……シナリオの穴を埋める、追加シナリオとかが無料で公開されるなら買ってもいいですが、そうでないなら値段が下がるまで“待ち”の一手で大丈夫かと思います。