「Remember11」レビュー

さて、衝撃の問題作「Remember11」のレビューにいきます。発売されたのは去年の3月なのですが、先月、SuperLite 2000シリーズで廉価版が発売されたので買ってみました。


SuperLite 2000 シリーズ Remember11 -the age of infinity-

SuperLite 2000 シリーズ Remember11 -the age of infinity-



さて、何故「問題作」なのか?それはこのゲームのレビューサイトを回ると、度々目にするフレーズが表しています。

  • 物語が未完のまま終わっている
  • 謎がすべて解明されていない

……前作にあたる「Ever17(→レビュー)」は、個人的にSFアドベンチャーとして非常に面白い作品でしたので、続編にあたるこのゲームへの期待も大きなものでした。(注:続編と言っても、背景世界が共通しているだけで、物語自体は独立した別個の話なので、どの作品も単独で楽しめます。「ドラクエ I」「ドラクエ II」「ドラクエ III」みたいなものです)


ところが、情報を求めてWebサイトを回ってみると結構酷評が多い。さて、どうしたものか……と思っている時に廉価版の発表&発売。2,000円(実売1,700円でした)なら外れでも買っていいか……と思い購入。

はたして、このゲームは本当に駄目なのか?物語は未完結のまま終わっているのか?そこらへんを踏まえてレビューを書いてみようと思います。




いつものレビューでは物語に関する項目は「ストーリー」で纏めているのですが、今回は前述の状況も踏まえて「ストーリー」と「世界観」にわけます。「ストーリー」では物語そのものの面白さがどうかという事を、「世界観」ではそのストーリーの背景について(物語の完成度だとかトリックだとかそういう事)を書いてみようと思います。

◆ストーリー …… 。・゜・ヽ( ´◇`)ノ・゜・。

そんなわけで、まずはストーリーから。

まず、断言します。お話の面白さという観点から見れば、Remember11」は前作の「Ever17」を大幅に上回っていると思います。それどころか、アドベンチャーゲーム史上、屈指の傑作と断言していいでしょう。それ程までに素晴らしい作品です。

ゲーム前半から息をもつかせぬストーリー展開。離れた二つの場所で平行して進む物語は、両方とも奇妙にリンクしつつ、思いもかけないエンドへと進んでいきます。二転、三転するストーリー展開は見事。

物語の片方の舞台は冬の雪山。飛行機事故から運良く生き延びた4人が何とか見つけた山頂近くの避難小屋。絶望的な状況の中で救助を待ちながら生き延びようとする4人。次第に失われていく食料、薪……容赦なく襲い掛かる凍えるような寒さ……大自然の脅威の中でくず折れていく心。はたして、彼らに未来はあるのか?

物語のもう片方の舞台は特殊施設の中で隔離されて過ごしている4人。その特殊な状況の中で何度も襲われ命の危機に晒される主人公。ここには4人以外の誰もいない。誰が主人公を狙っているのか?そしてここに隔離されている意味は何か?誰も信じることは出来ず、憔悴していく体……。いったい、誰が、何の目的で主人公を殺そうとしているのか?

Ever17」の欠点として、物語が冗長であるというのがあると思うのですよ。話にだらだらしている部分があって、ダレてしまう。しかし、こと「Remember11」に関して言えばその欠点が克服されているように思います。どちらの舞台も、常に死と隣り合わせの緊張感があり、どきどきしながら話を進めていく事になります。その為、バッド・エンドも非常に多いです。シリーズ最多?迂闊な選択肢を選ぶとすぐに死んでしまいます。

◆世界観 …… (´・ω・`)

さて、今度はそのストーリーの背景について見ていきます。

このゲームがあちこちのサイトで書かれている批評。「物語が未完成で終わっている」。さて……これはどういう事なのか?

ゲームとして見てみると、確かに、未完成で終わっていると言うのは嘘ではありません。正確に言うならば、物語としては終結しているけれど、回収しきれていない伏線が存在するという事なのです。しかも、どうやら、これは製作者サイドが故意に回収しなかったようなのです。

一見、物語も完結していないように見える方もいると思いますが、ゲームの背景を考えると物語自体は確かに終結しているのです。ネタバレになってしまいますが悟の人格がプレイヤーが生み出したものであるのならば、プレイヤーがいなくなった瞬間がこの物語の終わりなわけで、プレイヤーが意識を介入しない世界では変化が起きようはずもなく、つまり、物語はあの終末に収束せざるを得ない……。という事なのです。自分で書いていてもややこしい(^^;)

さて、このゲームをパズルで例えてみます。ゲームを終わる頃には全体の80パーセントは完成します。そして、残りのピースも確かにプレイヤーの手元に存在しているのです。ただ、その残りの部分には、見本となる完成図が存在しないのです。しかも、その残りの部分は丁度、絵の真ん中あたり、絵の要の部分の完成図が存在していないのですね。

ピースは確かに存在するので、プレイヤーはあれこれ推理しながら残りのピースを埋めていく事が出来ます。そして現在、ネット上には各々が考えた色々な完成図が発表されており、中には製作者サイドが考えている完成図とほぼ同じであろうという部分まで完成された絵も存在しています。

しかし、完成図が存在しないため、どれだけ近い部分まで絵を完成させてもプレイヤーには、それが正しい完成図なのかどうなのかを確かめる術が無いのです。この辺が恐らく酷評されている原因でしょう。

ちなみに、私が読んで「なるほどっ!」……と感心したのは、次のサイト。

http://f9.aaa.livedoor.jp/~glassun/

非常に説得力がある推論を公表されており、個人的にも真実に限りなく近いのではないか……と思うのですが、いかんせん。繰り返しますが、どれだけ正しいと感じても、それを確かめる術が無いのです。

◆グラフィック …… 。・゜・ヽ( ´◇`)ノ・゜・。

原画担当は左氏。非常に実力がある方ですね。このゲームを遊んで一発でファンになりました(笑)パッケージ画像を見たときは正直「……コンシューマゲームにしては、(色々な意味で)濃すぎるんじゃないか…………」と思ったのですが、ゲーム中のグラフィックは色の塗りをアニメっぽく抑えてソフトなものになっています。

◆音楽 …… ( ´_ゝ`)

可も無く不可も無く……この辺は「Ever17」でも感じたのですが、音楽に関しては極力BGMに徹しているという印象です。音楽が自己主張しない。その代わり、鬱陶しくも感じない。自己を抑えて、裏方に回ろうとしているような感じなのです。

なので、いい曲だなぁ……と思いつつも記憶にあまり残りません(^^;)

◆システム …… 。・゜・ヽ( ´◇`)ノ・゜・。

コンシューマのアドベンチャーゲームとしてはいう事は全くありません。100点満点をあげてもいいでしょう。既読スキップは早いし、選択肢毎にオートセーブしてくれるし、一度辿りついたシーンは何処からでも再開出来るし、左手だけで操作出来るし……

プレイヤーとしてストレスが溜まる要因が全くありません。見事っ!

◆総評 …… (*^▽^*)

定価2,000円なら、絶対に損はしません。作品の出来としては確実に値段以上の価値がある……と言い切ってしまいましょう。アドベンチャーゲームが好きならば、是非プレイして欲しい作品です。

ただ、「謎を全て解かないと気が済まない」というタイプの人間にはちょっと辛いかもしれません。例えるならば、テレビ版エヴァンゲリオンの最終回にも似たような感覚。物語としては完結したけれど、明確な解が示されていない伏線がいくつか……。

真実に近い所まではネットの推論サイトで近づけるので、あとは、出来る事ならばそれが正しい解なんだ……という裏づけが欲しい所であります。KIDさん、ゲームの続編じゃなくてもいいので、せめて公式見解として、作品の背景世界をサイト上にでもアップしてくれませんかね……(^^;)

あ、最後に。SuperLite 2000版はおまけ要素としてパッケージの外側のジャケットがリバーシブルになっています。表紙の紙を取り出して、ひっくり返して装着すると、通常版の表紙(この文のすぐ下参照)のパッケージになるという事です。小ネタですが、こういうちょっとした心配りは嬉しいですね。


Remember11 ~the age of infinity~通常版

Remember11 ~the age of infinity~通常版