「智代アフター」レビュー

さて、今日もしっかりゲームレビュー。4日目の今日はKeyの新作「智代アフター」のレビューに行こうと思います。


智代アフター ~It's a Wonderful Life~  初回特典版

智代アフター ~It's a Wonderful Life~ 初回特典版


この作品、同じくKeyのゲームの「クラナド」の登場人物の一人、坂上智代を主人公にしたゲームなのですが、商品紹介ではCLANNADとは別作品であるという注釈が書かれています。何でかというと、ソフ倫対策という事です。「クラナド」はHシーンの無い一般作として発売されたので、登場キャラが17歳の高校生で何の問題も無いのですが、今作は18禁になった都合上、前作の設定を引っ張ると色々まずい事があるという事です(死)

さて、今回は強烈にネタバレ有りのレビュー&大人向けゲームという事で、大人な方でネタバレOKな方のみ「続きを読む」をクリックして下さい。

あ、そんなわけで、先に注意点だけちょっと書いておこう。「智代アフター」は、

  • クラナド」の智代のエンディングに満足をしている。
  • ハッピーエンド派である。
  • 頑張った人にはそれに報われる結果が出て欲しい。
  • 智代アフター」は「クラナド」のファンディスクと思っている

……以上の条件に当てはまる人は注意!地雷になる可能性があります。購入前にしっかりと調査をした上で遊んで下さい。



シナリオ …… ( ´∀`)

伝えたいメッセージは分かるけど、その表現手段が安易過ぎる。

Keyのゲームでは「Kanon」にしろ「Air」にしろ「CLANNAD」にしろ、逃れられない死だとか不治の病だとかそういう設定が頻繁に使われるのですが、今回もしっかり使われてしまっています。

Kanon」「Air」あたりまでは、まあそういう表現手段が好きなんだろうなぁ……と思っていたのですが、流石に「クラナド」あたりで、「また、そういう展開か……」という疑念が沸き始めました。

ただ、「クラナド」の場合は最後にその運命すら超越するという部分で「Air」からの進歩を感じられたので納得だったのですが、流石に4度目ともなると……。しかも、また「Air」と同じで助けられないし……っていうか、テーマ自体も「Air」の美鈴&晴子と被っている部分もあるし……。

流石に、「ゴミ山で足を滑らせてこけて、そのこけた時に後頭部を打って、その怪我が原因で治るのが困難な記憶喪失におちいる」というのは、物語の展開として安易すぎると思うのです。何だか、そんなに頻繁にその手段を使われると、「ゲームのキャラだから、この辺で犠牲になってもらおう」と簡単に思っているように感じてしまう。

物語の表現において、そういった「死」や「不治の病」というのは感動させる物語を書く時の王道ではあるのですが、だからこそそういった手段は安易に使ってはいけないと思うのです。

そろそろKeyは「誰かが不幸な目に合わなくても幸せを表現する方法」を見つけなければならない時期に来ていると思う。同じ方法を使って、しかもその表現手段が安易になる一方では、段々飽きられてしまうと思う。



また、作品のポジションとしても微妙。タイトルから見るに「クラナド」のファンディスクっぽい位置づけに見えますが、これはファンディスクと捕らえたら駄目でしょう。

クラナド」では、二人は苦労を重ね、一度は別々の道を歩み、最後の最後でようやくやっと結ばれて、幸せな道を歩み始める……と、ここで終わっているわけです。「ファンディスク」とするならば、少なくともこの二人の幸せの道を崩すような結末を用意してはいけない。

クラナド」で苦労してやっと結ばれた二人なのに、今作で朋也は若くして逝ってしまう。物語としては有りだと思うけど、ファンディスクとしてはこの結末は駄目でしょう。なので、冒頭で「この作品をファンディスクと考えている人は注意」と書いたわけです。

ファンディスクで無かったとしても、設定的に「クラナド」を引きずっているので、やっぱり辛いものがありますが……。う〜ん。「クラナド」とは全く別の作品で、こういう表現をされたのならまだ抵抗感は無かったのですが、「クラナド」で幸せな結末を用意されていた二人が「アフター」でこういう結末にされたのは、やっぱり嫌なものですね。「クラナド」の設定を使って欲しくなかった。

ですので、私は多くの人と違う意見になってしまうと思うのですが、この作品はクラナド」を未プレイの方にはお勧め、「クラナド」経験者は情報を集めてからプレイして下さいと言っておく事にします。

グラフィック …… 。・゜・ヽ( ´◇`)ノ・゜・。

原画が樋上いたるさんからフミオさんに変更。何となく、私の中ではフミオ氏はフライングシャインのイメージが強いのですが、結構多くの会社で原画を描いているんですね。

絵の実力から考えると、正直いたるさんよりフミオさんの方が実力は上だと思っているので(こらっ!)特に問題は無し。智代に関しても、元のデザインを崩さずにフミオ絵にアレンジされて、それが違和感なく感じられます。

いたる絵に特別な思い入れがある人以外なら、すんなり受け入れられるかと。

キャラクター …… 。・゜・ヽ( ´◇`)ノ・゜・。

新キャラ二人がいい感じです。河南子に関しては、恐らく主人公の智代を食う人気が出る事と思います(笑)ただ、原画がフミオさんという事もあって、そらうたの「知夏」を思い出してしまいました。声がどこかで聞いた事があるなぁ……と思ったら「ウチ妹」の優香役の人でした。どおりて……。

鷹文もいいキャラクター。ボケも突っ込みも出来るオールマイティーで、心優しくて、美形……完璧っ!私の中のサブキャラランキングの上位に食い込んでおります。

既存キャラ二人もいい感じです。智代の声(一色ひかるさん)もマッチしていてグッド。上手い人が声優をしてもらうと、やっぱり声はあった方がいいなぁと思いますね。

音楽 …… ( ´∀`)

Keyの音楽は全体的にレベルが高いのですが、今回もいい曲が多いです。全体的に静かな曲が多いかな。お気に入りは「Morning Glow」。

ただ、主題歌の「Light Colors」は曲自体はいいのですが、打楽器パートというか、テクノビート?が若干煩いです。もっとヴォーカルの音量を大きめに録音して欲しかったです。

えちぃ …… ( ´∀`)

Keyのゲームとしては、頑張っていると思います。フミオさんの絵柄も手伝っていますが。

え〜、フェチ心をそそるエッチ(?)とでもいいましょうか。シャクは短いけれど少々マニアックな行為が多いです。尚、サブキャラにはHシーンは無いので期待しないように(笑)

お勧め属性:「純愛」「キス」「フェラ」「汚れた下着・シミ」「足コキ」「アナル」「青カン」

総評 …… ( ´∀`)

クラナド」の設定をどれだけ引きずっているかによって、大きく評価が分かれます。単独で見れば中々の出来なのですが、やはりあのエンディングは商業作品としてはどうかと思うわけです。

巷では「クラナドをプレイした人は、是非一度やって欲しい」という意見が多いですが、私は全く逆に考えます。クラナドを未プレイならお勧め、経験者は事前に情報を集めてからプレイするのが吉」……と。それくらい、あのエンディングはどうかと思うわけです。

ソフ倫対策として「CLANNADとは別作品である」という注釈が付いているわけですが、皮肉な事に実は内容面から見ても別物として見た方がいいと思います。というか、別物と思わないと朋也と智代が可愛そうで……。

智代は確かに、朋也を失ったとしても大切なものを得る事が出来たかもしれない。けれど、それはベターな結末であってベストでは無い。

クラナド」のエンディングの段階では、限りなく「ベスト」の結末が二人の未来に広がっていると予感させるエンディングだったのに、今作ではその可能性が消滅されてしまった。可能性が1%でもあるのならば希望も持てますが、0%ではその可能性は完全に潰えてしまうのです。

とどのつまり、「物語」としては成功したとしても「エンターテイメント」としては失敗していると思ってしまうのです。これが完全に受身になる本と、間接的ながら物語に介入出来るゲームの差ではないかとも思うのです。

あ〜。やっぱり、これとは別の未来が二人には訪れて欲しいですね。クラナドであれだけ苦労したのですから。


(参考→「智代アフター」と「めぞん一刻」