「The Tower SP」レビュー

そんなわけで、ゲームボーイアドバンス版「The Tower」のレビューにいきます。


The Tower SP

The Tower SP


最初、Amazon検索で「TheTower」で検索してもヒットしない。それならと、「タワー」で検索かけたら、やっぱりヒットしない。3度目に「Tower」で検索かけたらやっとヒットしました(^^;)スペースが微妙な位置にあるから……。

◆ 古き良き時代のSLG、再び

で、その「TheTower」なのですが、まずゲーム内容を簡単に説明しましょう。一言で言うとビルを建てるゲームです。プレイヤーはビル建設会社の開発総責任者として、ビルを建てて行く事になります。*1俗に言う「経営SLG」に類するゲームですね。

さて、ビルを建てる……といっても、最初から自分の思い描いた設計図通りにドーン!とビルを建てられるわけではありません。お金が無いからです。初期費用はたった1億5千万円。これでは、小さなビルしか建ちません。では、どうするのか?そう、足りない費用の分は建てたビルから得られる収入で賄う事になります。

つまり、最初は小さいビルで我慢して、その中に会社やらホテルやら商業テナントを入れて収入を得、その費用でまた建て増ししていく……というのが基本の流れになります。建て増しに建て増しを繰り返す、非常に危なっかしいビルなのです(笑)

決められた目標……というものは無いのですが、一応、ビルの人口を2,000人以上にして、ビルの最上階に大聖堂を立てると、結婚式がそこで行われ、最高の称号である「Tower」を得る事が出来ます。もちろん、その称号を手に入れた後もゲームを続ける事が出来ます。

単純ですが、面白いですよ〜。

◆ 高いゲーム性と分かりやすいゲーム内容

ゲーム内容は前述のように「ビルを建てるゲーム」……と一言で言える単純さながら、なかなかどうして、ゲーム性は非常に奥深いです。

まず、このゲームでは一人一人の住人がちゃんとグラフィックとして表示され、考えて行動しています。もちろん、プロフィールもちゃんとあり。子供や老人、男性・女性、サラリーマンに主婦……とバラエティーに飛んだ多くの人がこのビルを利用しています

そんな沢山の人がいるのだから、当然、設備の配置に気を使う事になります。例えば、「花屋さん」は女性に人気のお店なのですが、その隣に「そば屋(主に男性に人気)」を設置するのは何だかチグハグですよね?そういうお店同士の相性を考えて店舗を設置したりだとか。

もう一つ例を上げると、「映画館(集客力がとてもある)」をビルの中に入れるなら、そこに辿り付くルート上にはやはり「オフィス」だとか「警備室」では無く、「食べ物屋」関係や「店舗」を置いておいた方が、ついでにお店に寄ってくれるお客さんの効果が見込めますよね。そういう「お店の相性」や「お客の流れ方」を読む事がとても大切なゲームだったりします。

他にも大切なのは、「トイレの確保」と「移動ルート確保」。特に、「移動ルートの確保」はこのゲームの肝と言っても過言ではないくらい重要です

というのも、ビルが大きくなって利用するお客様が増えれば、当然エレベーターが込むわけです。ですが、ビルの広さは有限だし、それ以上にゲームのシステム上、エレベーターの設置可能台数が決められているので、決められた数のエレベーターで効率よく人を輸送しないといけないのです。

例えば、1〜9階までは利用者数はそこそこだけど、10〜13階は利用者がとても多い……という場合は各階停車のエレベーターと10〜13階にしか止まらないエレベーターの2本を用意するとかね。他にも階段やエスカレーターを組み合わせたりとか*2。そういう事を考えながら、ビルを大きくしていくのがとても楽しいです。

でも、だからと言ってゲームが複雑かというと、そんな事はなく、基本的にプレイヤーがやる事は設備や店舗を建てる、もしくは壊すだけ……という単純仕様です。その設備や店舗も予め大きさが決められていて(例えば、「トイレ」なら、横5ブロック分みたいに)プレイヤーはジグソーパズルの様に用意されたピースを思いのまま配置していく事でビルを組み立てていくのです。

操作は単純、でもゲームは奥深く。このバランスが素晴らしい。昔のゲームは(ハードの性能の問題もあるのでしょうが)このゲームのように、現実の要素を適度に取り入れつつゲームとして楽しめるようにアレンジする技術が高かったなぁと思います。最近のゲームはリアルさでは断然勝っているのですが、それに伴ってゲームまで複雑になっている事が多くて個人的に投げ出すことが多いです(^^;)

「適度にリアルで、ゲーム性が高い」ゲームがもっと出るといいなぁ……と個人的に願っています。

◆ 問題点は殆ど無し。ただ、あえて言うなら……。

そんなわけで、個人的にベタ褒めの「TheTower」なのです。経営SLGが好きな方なら買って間違いなし!一度やり始めると止まらない、まるで「とんがりコーン」のようなゲームです。

しかし、まあ、あえて苦言を言うなら3点気になる事がありました。

1点目は「時間の早送りの操作方法」。このゲームではAボタンを押しっぱなしにするとゲーム内の時間が早く進むのですが、この「時間の早送り」は割かし頻繁に、しかも長時間使う事が多いので、ボタンを押しっぱなしという操作方法では指がつらいです。出来れば、設定画面かなんかで速度変更が出来て、Bボタンを押すまでその状態をキープ……という方法にしてくれた方が嬉しかったです。

2点目はセーブファイルが一つしかない事。折角苦労して作ったグレートなビルも、新しくゲームを始めようと思ったら、データを消さないといけません。これは、ちょっと悲しい……せめて、あと一つセーブファイルがあれば、シナリオ毎にセーブしておく事が出来るのですが……。

3点目は……これはゲームシステム上仕方が無い事なのですが……「繰り返しプレイ時、変化に乏しい」という事。

どういう事か?例えばこのタイプのゲームの有名どころでは「シム・シティ」があるのですが、あのゲームの場合、ゲームを始める度に違うマップが出来ますよね?山が多い地形だったり、川が乏しい地形だったり、海に囲まれているマップだったり……。で、その土地の地形に合わせた町作りのプランを考える事で、やる事は同じでも、毎回新しい戦略が生まれるわけです。「この土地は山が多いから鉄道より道路をメインで作ろう」……とか、「このマップは川で地形が完全に二つに分かれてしまっているから向こう岸を工業地帯、こちら側は住宅・商業地帯をメインに町を作ろう」みたいな感じで。

でも、このゲームの場合、スタート時の状態が毎回全く同じ。なので、プレイスタイルも自ずと似たようなものになってしまうのです。前述の「シム・シティ」で例えるなら、毎回、山も川も海もない「まっ平らな平野」でゲームがスタートするような感じです

この欠点の解消の為か、一応設置出来る店舗やイベントに違いがある2本のシナリオが用意されています。そして、それぞれのシナリオ共にやり応えがあるのでタップリ遊べる事は間違いありません。……う〜ん、でも、何かいいアイデアが欲しい所ではあります。

◆ 総評

経営SLGが好きなら買って間違い無し!ここ最近のSLGの中では珠玉の出来です。携帯機向けのアレンジも良好。GBAで出るという事で気になっていた動作遅延も問題なしです。分かりやすく、大胆で、でも奥が深い燻し銀のような魅力を持ったソフトです。

特に、「最近のSLGはどれも複雑で……」と思っている人にはぴったりの作品です。

*1:ちなみに、この会社の名前は「山之内ビル建設」であります。

*2:階段やエスカレーターにも制限があり、例えば、エスカレーターの場合、お客は4階分までしか連続で移動出来ない。また乗り物の乗り継ぎも決められたエリアでないと出来ない。