社長に学べ!

「ほぼ日」で連載されている、岩田聡氏(任天堂社長)と糸井重里氏の対談が面白くて毎日チェックを入れています。

http://www.1101.com/president/index.html

読んでいると、「ああ、成る程!」と感心させられる話が多いです。

岩田
「この人が自分のメッセージを理解したり共感したりしないのは、自分がベストな伝えかたをしていないからなんだ」と、いつからか思うようにしたんです。

うまくいかないのならば、自分が変わらないといけない。

この人に合ったやりかたを、こちらが探せば、理解や共感を得る方法はかならずあるはずだ。

ですから、今でもうまくいかなかったら自分の側に原因を求めています。相手をわからずやというのは簡単ですし、相手をバカというのは簡単なんですけどね。


(岩田社長の発言より)

岩田社長といえば、HAL研究所という会社から任天堂に入り認められてついに社長になったわけですが、そのHAL研究所時代から「話を聞く人」というのと、「他人の悪口を言わない人」で有名だったそうです。情報伝達の大切さ、コミュニケーションの大切さを知っている人。だからこそ、かつてボスザル的態度をしていた任天堂を現在のようなお客を大切にする会社に改革する事が出来たのでしょう。その他にも次のような発言もしています。

糸井
「誰の協力もなしに世界を組みたてられる」というおもしろさを知っているどうしが同じコンピュータゲームソフトの会社にいるわけだから、心の中では、それぞれが「王様はオレだけだ」ということになって……ぶつかりあいが生まれるのは、当然というか。
岩田
技術者もそうですし、絵描きもそうですよね。「おれがいちばんうまい」という自信やうぬぼれがないとエネルギーが出ないでしょうから。

プログラムをやる人だって、自分のやりかたがいちばんいいと思っているからそうしているのであって、いちばんいいと思っていなかったら、プログラムを変えているわけですから。

そんな人どうしが一緒に開発をすると、プログラムでは「このやりかただと ここと合わないから変えてよ」という話がおたがいに出てきたり、絵を三人が描けば画風はそろわないですから、ひとつの商品に入れようと思ったら誰の作風にしようと決めないといけなくなりますよね。

そうすると、かならず衝突が起こるんです。だってそうですよね、クリエイションはエゴの表現ですから。

エゴの表現をしあっている人たちが、なにもしないで考えを一致させるはずがないんです。

みんな善意と情熱でやっているから「自分が正しい」んですよね。全員が「自分は正しい」と思っていて、ぜんぶちがう方向を向いているのを、どうやってそろえたらいいのだろうか……。

ある意味では、開発の仕事というのは、とてもいいマネジメントのための訓練だったんですね。


(糸井氏と岩田氏の会話より)

「他人の話を聞く」という事と「他人の言いなりになる」という事とは根本的に違う。場を良くする為には、必ず意見の相違はおこる。でも、それを恐れて何もしなければ、悪化はせずとも、決して状況が良い方向に向かう事も無い。何もアクションを起こさなかったら、そこから先には進めない。

だけど、「自分は正しい事を言っている」と思っている同士が口論を交わせば、意見を収束させるのはとても難しい。そんな時、言っている内容ではなく、その伝え方が大切になる事もある。

糸井
うん。「あなたは、間違っているかもしれない」と正しく指摘してくれる人がいたとしても、友達にはなれない、みたいなことですよね?
岩田
それは、その人が受けとったり共感したりするように伝えてないですもんね。

間違っていることがわかっていたら、その人が受けとって理解して共感できるように伝えないと意味がないわけで……。

まぁでも、正しいことをいう人がいっぱいいまして、それでいっぱい衝突するわけです。おたがい善意だからタチが悪いんですよね。

だって善意の自分には後ろめたいことがないんですから。相手を認めることが自分の価値基準の否定になる以上、主張を曲げられなくなるんです。

でもそのとき、「なぜ相手は自分のメッセージを受けとらないんだろう」という気持ちは、正しいことをいう人たちにはないんですね。
糸井
「神の意志にそえ!」と両方がいっているようなもんですよね。
岩田
はい、宗教がちがうのに。
糸井
それぞれ別の神様を頭に描いている。だから正しいことをめぐって論争しあっている状態って、ある種の宗教戦争ですよね?
岩田
はい。だからじつはコミュニケーションが成立しているときは、どちらかが相手の理解と共感を得るために、どこかで上手に妥協をしているはずなんですよ。


(岩田氏と糸井氏の会話より。この部分に限り、強調部分を霜月が変更しています。)

この対談、毎日少しずつ更新されているのですが、本当に面白いです。「社長に学べ!」なんて大層なタイトルがついていますが、岩田氏の人柄もあって、「社長」という感じでは全然無いのですね。だからこそ、話から得るものも多い。過去ログも全部読めるので、興味のある方は是非!お勧めの対談です。

あ、読むときは、ちゃんと第一話から読んだ方が楽しめますよ!(笑)