「そらうた」レビュー

さて、積みゲー一個クリア「そらうた」です。

そらうた

例によってAmazonにリンク貼ろうと思ったら検索にヒットしませんでした、このゲーム……何故?生産中止?

え〜……最近のレビューは結構良作ゲームばかりだったので久々の辛口評価になりそうです。毎度のことですが、ネタばれ含むので以下隠します。



う〜ん……何というか……個人的には駄目駄目でした。何が駄目って、主人公に魅力が無さすぎ。プレイしていて、こんだけムカつく主人公も珍しい。そんなわけで、こんな男なんかとっととふって別の男とくっつけよ〜!とヒロイン達に思ってしまうわけで、その段階で恋愛ゲームとしては失敗作。

「幽霊が見える主人公。いくつもの幽霊が成仏していく所を見てきたから人間としての心を欠如している」……という設定(表向き)なのですが、心を欠如していると言いながら、ゲーム中、日常生活では普通に感情を表現しているわけで、説得力が無い。同じ心を欠如しているキャラクターでも、例えば「cross†channel」の太一なんかは、その辺の描写が非常に上手く書けていて心が欠如している事が自然にわかり、尚且つ魅力あるキャラになっている。このゲームの主人公は、ただ単に自分が優しく無くて、人と付き合えないのはこういう過去と理由があるからだよ〜、と回りにイイワケしているだけにしか見えない。一言で言えば単にヘタレなだけのキャラで終ってしまっているのです。

心に欠如があるなら、日常からもっとその事を表現してあげないといけない訳で、急に切れだす主人公を見ても同情は全く出来ず、寧ろ、かえってイラついてストレスが溜まるだけ。ゲームだから仕方が無いのかもしれないですが、こんな主人公誰が好きになんねん?と疑問に思う。あと、一人称が「僕」なのも気持ち悪い。言葉使いや行動がどう考えても「俺」って感じなので、一人称に「僕」をつかうなら、そういうのが似合う主人公描写にして下さい。っていうか、ゲーム途中で何回か一人称が「俺」になっている誤植があるし(−−;

シナリオ別に見るとまず、知夏。一番最初にこのシナリオをクリアしたのが悪かった。このシナリオの主人公は最悪です。今まで普通に行動してたのが、急に「心が欠如していること」を思い出したかのように切れ始める。何だ……これ?性格変わりすぎ。っていうか、普通ありえない。そして、普通ありえない行動をした事に気付くだけという、それだけの事を強引に感動させようと持っていく。それで感動を誘うのは無理です。都合のいいように「心が欠如している」という設定を使っているだけ。設定に振り回されて肝心のシナリオが駄目駄目。途中の日常会話は結構面白かったので後半のこの駄目っぷりが余計残念。終わったとき、感動じゃなくて怒りを伴うストレスが溜まっているゲームなんて珍しい。

そして、澪&真奈シナリオ。某ゲームや漫画の設定をパクリすぎ。絵本の主人公が「オコジョ」でタイトルが「ふたりのたからもの」……ふ〜ん、そうですか(冷)最後の告白が先に死んだ親友の事を思って「お願いです、1日でいいから私より長く生きて下さい……」……ふ〜ん、そうですか(冷)インスパイアーならしてもいいけどもう少しヒネル事は出来なかったのか?

葵シナリオ。ヘタレパワー全快。っていうか、オープニングから普通の高校生なら有り得ないようなキモイ甘えんぼぶりを発揮しているわけですが、このシナリオはさらにそのヘタレパワーをアップさせます。こんな弱い精神力でよく、この年まで生きてこれたな〜という感じです。また、比較の問題ですが、知夏シナリオであんだけ惚れるまで時間がかかったのに、このシナリオでは別人になったかのようにすぐに惚れる。実は、このゲーム、シナリオ毎に別の人がシナリオを書いてたりするわけですが、その統制が上手くいかず、シナリオ毎に別人のような性格になる事もしばしば。……とは言え、この葵シナリオも前半は駄目駄目パワーが溢れていますが、後半は結構良かった。このゲームで良かったシナリオはと聞かれれば「葵シナリオの後半」と答えるかな……?

で、シメの霊子シナリオ。エンドが駄目すぎる。結局の所「愛する人のためには殺人さえ起こしてもいい」と錯覚しかねない結末に向かってしまう。遺族の気持ちをひたすら無視して感動に持っていこうという路線に唖然。「綺麗だったね……」って、おいっ!

結局のところ、シナリオライターの思想がガキくさいという事に帰結するのですが、いい部分もありました。まず、ミステリとして、ほぼ完璧に伏線の解決をしているという事。また、そのミステリーの構成も中々こったものであったという事。

構成はいいけど、人間描写が駄目なゲームでしたね……。あと、複数のライターを使う時はその統制が大事だという事も教えてくれるゲームでした。